巻き爪の悪化から始まった
現在、51歳(女性)になります。化膿性爪囲炎に罹ったのは、20歳の夏でした。
左足の親指の巻き爪の食い込みで、最初は軽い痛みがあっただけでした。それまでもよくあることだったので、消毒液とマーキュロクロム液を塗って放置していました。
しかし、簡単に治ると思っていたら、いつの間にか化膿し、爪の周りが腫れ上がっていたのです。痛みもひどく、ズキズキと足先が脈を打つようでした。
病院では爪を剥がされると聞いて、怖くて受診しませんでした。その後も民間療法に頼りました。その中の1つが、どくだみ草をすりつぶし、患部に貼り付ける方法でしたが、症状は悪化していくばかりでした。
民間療法と自己治療でさらに悪化
民間療法を試す間に、爪の左右の肉が盛り上がってくる肉芽ができてしまい、あろうことか自分でその肉芽を切ってしまいました。後になってそんな痛いことをするくらいなら病院で麻酔をしてもらって爪を剥がした方が良かったと、つくづく思いました。
しかし、その時は病院に行きたくないという思いだけで行動してしまったのです。自分で肉芽を切った後は、膿も思い切り出たことで少し良くなったように見えましたが、数日後、さらに悪化してしまいました。
その内、絆創膏では膿を吸収しきれず、厚いガーゼで包んでも靴下に染み出してくるようになりました。
次に、アクリノールガーゼやアクリノール「ホエイ」などの市販薬も試しましたが、アクリノールガーゼではあまり改善せず、アクリノール「ホエイ」では多少、改善していくかに見えたのも束の間、2週間後には元の酷い状態に戻っていました。
それでもしつこく、残っている「ホエイ」を全て使い切るまで、我流の治療を続けてしまいました。
ようやく受診
結局2か月間民間療法と市販薬に頼った結果、痛みと化膿がどんどん悪化し、指をなくしてしまうのでは?と怖くなり病院を受診することにしました。事前に知り合いから皮膚科での受診になると聞いていました。
しかし、複数の診療科のある病院の受付で相談した結果、行くように言われたのは整形外科でした。結果は重度の化膿性爪囲炎で、どうしてこうなるまでに来なかったのかと呆れられてしまいました。
どうして整形外科になったのかは、すぐにわかりました。最初から麻酔を打ち、爪を剥がす、切開をして膿を出すという処置を受けたのです。そして抗生物質を処方され、しばらくガーゼ交換に通院することになりました。
麻酔が切れてからは、化膿性爪囲炎の痛みと爪を剥がした痛みがしばらく続き、数日後には爪を剥がした方の痛みは軽くなっていきました。しかし、それでも症状はなかなか改善せず、1か月ほど消毒とガーゼ交換のために通院しました。
治療途中、抗生物質が体に合わなくなり、違うタイプの抗生剤に変え、その後さらにその抗生剤も合わなくなり、だんだん弱い抗生剤しか使えなくなっていきました。
化膿を繰り返す
その後2か月程は、良くなったり悪くなったりを繰り返しましたが、治療を続けるうちに通院の必要がないくらいに改善し、一時は完治したかに思えました。
ぺろぺろになって生えてきた爪らしきものを眺め、久しぶりに触れる親指に感動したことを覚えています。その後、爪が硬くなって普通の靴が履けると喜んだのもほんの少しの間だけでした。
完治したかにみえた1か月後くらいから、硬くなった爪と皮膚のの間が化膿し始め、また通院するという事態になりました。その後も改善と再発を何度も続けているうちに1年半もの期間が過ぎていました。
その繰り返しの中、爪の形はいびつに変形し、爪の周りがグバグバと張りのない皮膚になり、色も悪く絶えず化膿した匂いに悩まされました。
2年近くも化膿性爪囲炎の状態が断続的に続いていたため、治療中でも、どうしてもパンプスを履かなくてはいけない時がありました。自分の足より大きいサイズでも、化膿性爪囲炎の包帯を巻いている足先にはきつく、パンプスに無理に足を押し込む形で履いて、さらに悪化させたこともありました。
靴下やストッキング、靴の内側は薬の色や膿の色で変色し、洗っても消えない色や匂いに気が遠くなったことを覚えています。
手術と化膿、そして手術
そんなある日、担当の先生が患部を触った後、レントゲンを撮ろうとおっしゃいました。その結果、爪の付け根あたりに軟骨が生えてきていたことがわかりました。炎症を繰り返したことが原因かもしれないと言われ、その軟骨が爪や皮膚を圧迫していたことがわかったので、急遽、軟骨を削る手術と抜爪手術を同時に受けることになりました。
抜爪手術では、爪の左右の爪母(爪を作る部分)を切除する方法で、爪が生えてきたら細長くなるとのことでした。そうすることで巻き爪も治るといわれ、喜んで手術に同意したことを覚えています。
手術後は1週間後に抜糸し、その後もガーゼ交換に通い、3週間後には通院の必要はなくなりました。治るまでに2年近くもかかった化膿性爪囲炎から解放された日でした。
しかし、左の親指が完治して1か月後、今度は右の親指が化膿性爪囲炎になり、また受診することになりました。今度はすぐに抜爪手術を受け、2週間ほどで完治しました。こんなことなら、左足の親指の罹患の際、早く受診しておけばよかったと一番強く感じた日でした。
治療中は不便な生活
治療期間中は、お風呂で濡らしてはいけないため、ビニールで患部を巻き、水に強いテープで固定して細心の注意をして入浴していました。また、浴槽に入るとビニールの中の結露さえも良くないと2年近く、シャワーの毎日でした。
それでもうっかり濡らしてしまい、翌日ガーゼ交換の際には化膿がひどくなっていることが何度もありました。
また、足を圧迫してはいけなかったため、特別に正装で出かけなければならない時以外は、オシャレな靴も履けず、一回り大きいサイズのスニーカーを履く毎日でした。
20歳前後のオシャレをしたい時期にオシャレとは程遠い靴で恥ずかしい思いをした記憶が残っています。事情を知らない友達には、スニーカー好きなのだと勘違いされているくらいでした。
病院に行かない結果、長引いた
私の場合、ひどくなる前に受診していれば2年近くもかかるような病気ではなかったのに、爪を剥がされるのが怖くて、病院に行くことを躊躇い、先延ばしにしたために、痛みも匂いも苦しみも長引かせてしまいました。
また、民間療法や素人判断は症状をこじらせてしまうことが多いと実感しました。もちろん、民間療法の中には優れたものもあり、効果が実証されているものもあるので自分に合っていれば問題ないでしょう。
しかし私の場合、合わない治療法を2か月も続け、しかも市販薬の特徴さえもよく理解しないまま、知り合いからこれを使ったら治ったという話を鵜呑みにして、体質や症状の重さも考慮せず我流を貫いてしまいました。
その結果、薬物アレルギーまで発症させてしまい、今でも左右の親指の爪は異様に細長い、お世辞にもオシャレなペディキュアが似合うとはいえない指になっています。
早めの受診を勧める
痛みがいつもと違うと分かった時に病院に行っていれば、せめて2週間くらいで行っていれば、完治も早かっただろうと思います。
今ではインターネットが普及しているので、自分にとっての最善の治療法を見つけやすいと思います。自分で治せるかどうかは、写真検索などで自分で治せた画像と比較し、その画像より重症なら早めの処置を受けることをお勧めします。
また、治せそうだと思って実践しても、痛みや匂い、状態が2週間以上続くようなら、早めの受診が後悔しない結果につながります。